学長室 - 日本武道学舎ブログ
日本武道学舎 学長・吉田始史のブログです。
空手や合気道など武道の稽古で感じたことや、健康に関すること、 本の出版に関することやエッセイ、メールマガジン情報などを書いています。
日常生活における腰の角度の大切さ
2025-10-05 07:17
日常生活における腰の角度の大切さ
日常生活においても、仙骨を意識した姿勢は、あらゆるところで効果を発揮します。これから幾つかの場面を想定し、説明しますので是非日頃の生活に役立ててください。
歩き方・お辞儀・正座・椅子での座り方も美しく変わります
まず歩きかたですが、私たちは毎日、通学や通勤の他、あらゆる動きのなかで靴をはき、歩たり走っています。
にんべんに動くと書いて「働く」と書きます。人とは本来動くために作られた生き物です。しかし私たちは今、必要最低限である歩行という運動さえしなくなりつつあります。そのために筋力は衰え、歩くための筋肉にも支障が出ています。私たちの体は走ったり歩いたりするように作られています。一日長時間歩いても大丈夫なように作られているのです。しかし間違った使い方をしているために持久力はなくなり、循環器などあちらこちらに支障が出やすくなっているのです。
先ず歩く前に立つ姿を確認しておきましょう。正しく立つことができないのに正しく歩けるはずがないからです。止まっているサンドバッグを叩けない者が動いている相手を叩けないのと同じです。
ただ立っている姿勢を見ても、猫背、腰反りなどが目立ち、正しい姿勢をしている人は少ないと思います。ましてや体の重心が内くるぶしの下にかかっている人など殆どいないでしょう。
簡単に今説明した猫背になっていない、腰を必要以上に反っていない、ガニ股になっていないだけでも合格点かもしれません。上級者には更なる課題がありますが、別の動画で紹介します。
さて歩く姿は美しく、疲れづらく、もちろん痛みもないのが本来の姿です。
歩く姿を美しくするためには、バレリーナのように腰を反らし、脚を長く見せるのが良いように感じられますが、あの姿を持続させるのは難しく一般の人であれば直ぐに腰を痛めてしまいます。むしろ参考にするのは社交ダンスです。社交ダンスはもちろん立ち姿と動きを競うものですが、パートナーを必要とするため、相手を動かさなくてはなりません。そのためには軸をしっかりともたなければ、相手の体重で振り回されてしまいます。
その軸を作るために必要なことが仙骨を締めることです。つまりうんこ我慢の姿勢です。仙骨を締めることで股関節は締まります。大腿骨と骨盤の結びつきが強くなるのです。腰を反らして脚を長くみせようと腰を痛めるよりも、安定した軸を作るために仙骨を締め、筋肉を鍛えることにより殿筋の上を鍛えて脚を長く見せたほうがはるかに健康的です。
本当に正しく歩くと疲れません。それは正しい重心が体に無理をかけないからです。無理な靴をはき、外反母趾や膝痛で足を引きずるようになっては美しいどころではありません。
次にお辞儀です。 最近はお辞儀をすることはほとんどなくなりました。西洋の文化の下で生活している私たちが、茶道や華道、あるいは武道の道場に通わなければ、お辞儀と言う姿を見ることは、ほとんどないのではないでしょうか。しかしここで正しいお辞儀を通して、骨盤角度の重要さを説明します。
立っている姿が美しい方が良いのと同様、お辞儀も美しい方が良いのです。美しい姿勢が安定性を生み、さらには次の動作への動きを楽にします。
簡単に言うとお辞儀をする時猫背にならないようにします。これは立っている姿勢と共通します。猫背の状態でお辞儀をすると正座そのものの重心が高くなり安定性に欠けます。お辞儀をした時横から押されると猫背の場合は簡単にひっくり返りますが、背筋を伸ばし股関節の部位をハサミで切るように閉じていくと重心も低くなり美しくなります。
正座をする人、する場面は殆どなくなっております。今で通夜や葬儀でも椅子になっています。 私も座禅を組んでニ千時間はゆうに越えています。かといって何一つ得られてはいませんが。正座も座禅も座る基本は同じです。道元禅師の言葉を借りると「耳は肩に、鼻はヘソに」です。つまり耳の位置は肩の上にして、鼻の位置はヘソのライン上にしなさいということです。
私も始めの頃はアゴを引き、耳を肩の上に置くようにしていましたが、腰はそらした状態でした。しかし腰を痛めたために腰を反らせるのを止めました。その後、仙骨を締め腰の骨を膨らませるようにすると、非常に安定性が増し、禅寺で習っていたときに言われた「眠くなった時、後ろへ倒れるようにならないとダメだ」という言葉通りになりました。
この姿勢は背骨がまっすぐになり、見た目も美しく非常に安定した形となります。
最後に誰もが一番必要とし、時間を過ごす椅子での座り方を紹介します。椅子に座るといってもソファーやリクライニングで座る場合と仕事で座る場合があります。くつろぐ場合は腰に負担がかからなければ好きなように座って良いと思いますが、仕事で座る場合は時間も長時間になる場合が多いので正しい座り方が必要です。しかし椅子の場合は決して難しくはありません。ただ可能な限り深く座るだけで良く、できれば腰の部分を中心に背中全体を背もたれに押しつけるようにすれば、足を組むこともなく正しい姿勢を維持することができます。ただ時々立ち上がり歩くことをお勧めします。