学長室 - 日本武道学舎ブログ

日本武道学舎 学長・吉田始史のブログです。
空手や合気道など武道の稽古で感じたことや、健康に関すること、 本の出版に関することやエッセイ、メールマガジン情報などを書いています。

​丹田と健康の関係性

2020-01-07 22:51

丹田と健康の関係性

 丹田と健康はどのように影響しあうのだろうか。肉体からみた丹田と精神からみた丹田と重複する面も多いと思いますが、肉体からみると丹田の作りは正しい姿勢を導くと言う点にあります。逆に正しい姿勢がなければ丹田を生み出すことはできません。つまり正しい姿勢が健康に与える影響ということになります。加えて丹田の位置する場所にある臓器への影響も大であると言えます。その臓器は「腸」です。腸は第二の脳、いや現代では第一の脳であると断言する研究者もでてきております。丹田を意識すると言うことは、ある意味この腸を意識することを意味します。これについては後ほど詳しく紹介していきます。

先ずは正しい姿勢と丹田の関連から説明していきますが、正しい姿勢は病気とどのような関係があるかをはじめに説明します。これは今まで紹介してきた本と重複しますが大切なので、私の本を読まれた方も復習だと思い読み進めていただければと思います。

 先ずは姿勢と健康に言及している偉大な先人を一人紹介したいと思います。「操体法」を考案し体系づけた橋本敬三医師です。医師は未病と姿勢について次のように定義しております。ここでは少し長いのですが一部を紹介します。

未病と姿勢

本来医療と言うものは原始的には発病したものを回復させることであった。しかし、東洋医学の思想のうちには未病を治すという言葉がある。この謎を解く鍵は運動系にある。つまり姿勢である。健康破綻の機序を段階的に見るならば、知らぬうちに破たんが軽微に進行している場合もある。感覚的に異常を自覚してくる。健康ならば自己の全部あるいは部分的存在感は自覚しないものである。自己を意識することは、とにかく劣等感の存在を意味する。

身体的に異常感覚の継続的存在を意識する時は、何らかの健康に対する赤信号を、警告反応期にあることを意味する。さらに進展すれば機能障害を起こしてくるし、なおさらに進めばついには器質的に病理解剖学的変化を招来して機能の破滅に至るという順序をふむのである。

運動系に歪みができればこの系内を神経系、循環系、経絡が貫通しているのであるから、それらの支配下にある内臓や中枢神経系にも種々な影響を及ぶことは自明の理である。歪むことはストレスをおこすことであるから、局所の歪みはやがて全体のストレスを招来することになる。運動系に歪みが生ずれば第一に感覚異常がおきる次に機能異常が内枢に向かっておきて器質的変化に至る。機能障害をおこしている器官は伝染の危険にさらされることになる。歪んだ局所的ストレスは全身的ストレスに発展することがある。

未病を治す。未病とは未だ病名がついていない状態を言うのであろう。だから病が内に発してから外表に応じてくると言う見方ではなく外から見て、これは病気になるぞと気が付く点をみつけることもできる理由がなければならない。

ここでは力学的な歪みに見出そうとすることである。身体を不正当に使用する結果すなわち不自然な寝食・休養・動作などにより「臓」が歪む様になる。いったん歪んだからだというものは、そのままでは正当に使用できないから、ますます歪んでくるのである。関節がずれてくる組織の局部に疲労が溜まるそして凝結ができてくる。そして互いに相関連している体内の連結交通は阻害され、ここを通過すべき神経系、血管系、リンパ系の支配下にある抹消部分は栄養の排泄の機能に不全を生じ、毒素は沈着し外邪をうくる温床を形成するに至る。

股関節こそは全身の中枢機関である

 如何でしょうか? 真にご最もな話です。歯が痛くなり初めて歯の存在を知り、胃が痛くなり胃の存在を知る。健康であれば自分の身体の全部・一部の存在は自覚しないもの。自覚する時は劣等感すなわち異常の存在を意味するということですが、誠にもってその通りで身体各部位の普段の働きにいちいち感謝する者はいません。

 力学的な歪みも骨格からくるのは当たり前で、積み木を積む時に下が一つずれると、そのバランスをとるためにどんどん上まで崩れていくことは誰もが知るところです。そして本来まっすぐで無理のない所を通るはずの血管・リンパ管や神経なども歪みのなかを通り抜けなければなりません。

すべての内臓諸器官が本来あるべき定位置にあってこそ、その働きは負担なく本来の仕事を発揮できるということは誰にもわかることです。

足首や膝が痛い状態で走らなければ、それを庇うために他の部位に本来以上の負荷がかかり緊張・硬直を招き、それ緊張がさらなる歪みをもたらすことは大なり小なり経験しているところではないでしょうか。

編集後記

 身体の構造はもとより、これらの理論は組織にも当てはまるのではないでしょうか。「あるべきところにあるべき人がいない」「本来の役割を忘れ、調和を忘れ、自己主張優先で、今だけ金だけ自分だけ」状態。胃袋は「もういらない」と言っているのに目がイヤシイ、舌がイヤシイ。都合の良い弁護士を沢山引っ張り出して自分に言い訳をして欲求を満たす。程度の差はあれこそすれ、やっていること出発点は変わらないと言うことか。








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